旅の変化が決めた、私のカメラ最適解。トラベルライターが行き着いた機材構成

会社員のかたわら、トラベルライターとして活動を始めてから、気づけば7年が経った。振り返ると、旅のスタイルも、仕事も、そして人生そのものも大きく変わってきたと思う。独身だった頃の身軽な自転車旅、旅と仕事を兼ねながら写真を撮る時期、子どもが生まれて家族中心になった今——その変化のそばには、いつもカメラがあった。

「この機材構成が正解だ」と言えるものは、正直ない。ただ、その時々の”自分にとって最適解”は確かに存在してきた。今回この記事を書こうと思ったのは、機材レビューをしたいからではない。旅と仕事、ライフステージの変化に合わせて、どんな基準でカメラを選んできたのか。

その軌跡を一度残しておきたいと思ったからだ。これは、トラベルライターとして行き着いた、今時点での機材構成の備忘録である。

撮影機材・レンズ一覧(2026年1月時点)

【カメラボディ】5台

  • FUJIFILM X-H2(APS-C)
  • FUJIFILM X-S10(APS-C)
  • Canon EOS 6D Mark II(フルサイズ)
  • Canon EOS 80D(APS-C)
  • Canon EOS 9000D(APS-C)

【レンズ】13本

  • FUJINON XF16-80mm F4 R OIS WR
  • FUJINON XC15-45mm F3.5-5.6 OIS PZ
  • SIGMA 16-300mm F3.5-6.7 DC OS(Contemporary)Xマウント
  • Canon EF70-200mm F2.8L IS II USM
  • Canon EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM
  • Canon EXTENDER EF2X III
  • SIGMA 20mm F1.4 DG HSM(Art)EFマウント
  • SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM(Art)EFマウント
  • SIGMA 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM(EFマウント)
  • SIGMA 10-20mm F3.5 EX DC HSM(EFマウント)
  • TAMRON SP24-70mm F2.8 Di VC USD G2(EFマウント)
  • TAMRON 18-400mm F3.5-6.3 Di II VC HLD(EFマウント)
  • Fringer FR-FX20(EFマウント/Xマウント)

【コンデジ】6台

  • GoPro HERO9 BLACK
  • RICOH GR IV
  • RICOH GR IIIx HDF
  • LUMIX DC-TZ99
  • OLYMPUS TG-5
  • FUJIFILM FinePix SL1000

カメラのスタートはCanonだった

カメラを始めたのは2017年のこと。学生時代から自転車旅が好きで、日本各地を気ままに走っていたが、当時はもっぱらスマホ撮影だった。手軽できれいではあるものの、旅先で出会う風景や空気感を「もっと鮮明に残したい」と思う気持ちが、次第に強くなっていった。

そんなタイミングで出会ったのが、今では妻となった彼女だ。出会ったとき、彼女はCanon EOS 80Dを使っており、その影響を受けて一眼レフに興味を持つようになった。EOS 80Dを勧められたものの、社会人になりたての自分には少し背伸びだった。


最終的に手に取ったのは、展示品特価で並んでいたCanon EOS 8000D。これが、トラベルライターとしての原点になる一台だ。購入してすぐEOS 8000Dを携えて、学生時代から何度も通った大好きな小豆島を訪れた。一眼レフで切り取った風景の写りは想像以上で、その美しさに思わず息をのんだ。

旅行や日常の外出のたびに、彼女に教わりながらマニュアル撮影を覚えていった。一眼レフならではの鮮やかさや、奥行きを感じさせる表現に、気づけばすっかり魅了されていた。身につけた知識は、すぐに自転車旅で実践投入。いつしか撮ることそのものが、旅の大きな楽しみになっていった。

標準ズーム→便利ズームが正義に

最初に使っていたのは、レンズキットに付属していたCanon EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM。Canonらしい鮮やかな色のり、安定した描写、そして使いやすい画角レンジ。どれを取っても完成度の高い一本で、不満はほとんどなかった。

ただ、旅先で感じた「もっと先まで写したい」「あの道の向こうの景色まで残したい」という欲求には、少しずつ限界を感じるようになる。「もう少しズームできれば、旅先でのありのまま感動を切り取れたかもしれない…」と思うことが何度もあった。

2019年からトラベルライターとして活動を始めたことも、大きな転機だったように思う。トラベルライターは、文章だけでなく写真も撮れて当たり前の職業。表現の幅を広げるため、単焦点レンズSIGMA 20mm F1.4 DG HSM(Art)や、大三元レンズTAMRON SP24-70mm F2.8 Di VC USD G2、SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM(Art)なども試したが、最終的に行き着いた価値観は「対応力こそ正義」だった。

確かに単焦点や高級レンズの方が写りは良い。しかし刻々と変わる旅先の状況で、レンズ交換の余裕はない。また、なるべく荷物を減らしたい自転車旅では交換レンズを持参するのも厳しい。結果として、便利ズームレンズTAMRON 18-400mm F3.5-6.3 Di II VC HLDに落ち着いた。自転車旅や登山はこのレンズ一択。2台持ちの旅でも「便利ズーム相当の画角」を起点に、レンズ構成を考えていた。

超広角という飛び道具が欲しくなる

便利ズームレンズを使いこなす一方で、どうしても”飛び道具”が欲しくなる瞬間がある。その代表格が超広角レンズだ。初めてSIGMA 10-20mm F3.5 EX DC HSMを使ったとき、あの圧倒的な画角で切り取られる世界に一気に引き込まれた。ただし、超広角はそれ自体が独立した存在で、便利ズームとは相入れない。言い換えれば、便利ズームではどうしても網羅できない領域が、超広角なのだ。

そこで導入したのが、OLYMPUS(現・OM SYSTEM)のアウトドアカメラの名作TG-5。自転車旅や登山など過酷な環境でもガシガシ使え、水中撮影までマルチでこなすタフさが魅力だ。なかでも決め手になったのが、フィッシュアイコンバーターFCON-T02。35mm判換算で8mm相当の画角は、まさに別次元。便利ズームでカバーできない超広角域を補完しつつ、高温多湿で、濡れるリスクがある温泉での撮影も定番になった。

現時点でTG-7が最新モデルだが、スペックにほぼ差がないため買い替えは検討していない。画素数が1,600万画素ほどに上がり、TG-8が出るならば考えるかもしれない。

将来的なカメラシステム変更を模索

2017年にCanon EOS 8000Dを手にした頃、一眼レフ市場はまだ活況だった。しかし5年も経つと状況は一変する。SONYのαシリーズが一気に台頭し、CanonやNikonといった二強メーカーもミラーレスへ大きく舵を切った。気づけば一眼レフのボディラインナップは大幅に縮小され、将来のカメラシステムをどうするか、真剣に考えざるを得なくなった。2026年1月現在、一眼レフの生産はほぼ終息しつつある。

そこで購入したのが、FUJIFILMのXシリーズだ。当時フラグシップとして発表されたばかりのX-H2と、サブ機としてX-S10を迎え入れた。その一方で、Canonのボディは、EOS 6D MarkⅡとEOS 80D、EOS 9000Dと3台もあり、まだまだ第一線で活躍中。中でもEOS 6D MarkⅡは、トラベルライターとしての初めての大型案件の報酬を全額投入して購入した思い出深い一台。そして、シャッター幕が擦り切れた初代相棒・EOS 8000Dの後継として迎え入れたのがEOS 9000Dだ。

Canon EF70-200mm F2.8L IS II USMや、SIGMA 20mm F1.4 DG HSM(Art)、SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM(Art)など、今なお魅力が色褪せないレンズが手元には多くある。だからこそ、Canonのカメラシステムは無理に手放さず、EFマウントのレンズ資産をできる限り活かしたいと考えた。そこで導入したのがFringerのマウントアダプター。EFマウントのレンズをFUJIFILMでも使える体制を整えた。

FUJIFILMを選んだ理由は、①フルサイズにこだわりがない、②フィルムシミュレーションによる多彩な表現、③Xマウントの便利ズームレンズ(SIGMA、TAMRON)の選択肢が増えてきたこと、④SONYよりリーズナブルで仕事道具として扱いやすい、という点だ。

今でも仕事ではCanonを使うことが多いが、FUJIFILMのボディは生産数が少なく、モデルチェンジも早い分、資産価値が出やすい点も魅力に感じている。すでに生産終了しているX-S10の中古価格は、初値を超えている。Canonは純正のマウントコンバーターもあるため、最終的にはCanon RFマウントへ移行する可能性も、ゼロではない。

気軽に上質を残したくてコンデジへ

子どもが生まれ、旅のスタイルも変わった。アウトドア志向の旅は減ったものの、家族旅行の機会は増えてきた。以前のような「何でも撮れる万能さ」は必須ではなくなり、より軽く上質に、ピンポイントで思い出を残せるカメラに惹かれるようになった。そこで2025年は、多くのコンデジを購入する年になったように思う。


中でも、長く付き合える一台として選んだのがRICOH GR IVとGR IIIx HDF。発売時には手に入れることができなかったが、その後の争奪戦を勝ち抜き、なんとかGR IVを手にすることができた。まだ使い込めてはいないが、唸るほどの描写の素晴らしさである。初値以上で取引されることも多いGRシリーズは、使い倒しながらも価値を保てる点が大きな魅力だ。

一方、一眼レフやミラーレスを持ち出さなくても事足りる万能機として活躍しているのが、LUMIX DC-TZ99。トラベルズームの名に恥じない守備範囲で、簡単な取材はこれ一台で完結する。写りは当然フルサイズやAPS-Cに及ばないが、仕事道具としては十分な描写力だ。そして嬉しい誤算はマクロズーム性能の高さ。高山植物をこれほど鮮明に残せることに、正直驚かされた。

自分にとっての最適解は絶えず変わる

現時点での結論を一言で言うなら、当たり前のことかもしれないが、全部を一台でやろうとしないことだと思っている。かつては便利ズーム一本で、すべてを撮り切ることに価値を感じていた。だが、荷物の制限から解放され、かつてのように万能性を求めなくなった今は、用途ごとにカメラへ役割を持たせたほうが、結果的に満足度も高く、何より楽しい。

仕事では今まで通り信頼性の高いCanonと、表現の幅が広く、撮っていて楽しいFUJIFILMを使い分ける。旅ではRICOH GRやLUMIX TZ99のような軽快なコンデジをサブ機として投入し、時にはメイン機にする。一方、過酷な環境や飛び道具的な役割はOLYMPUS TG-5が担う。

カメラは嗜好品であり、仕事の相棒であり、そして思い出を刻む装置でもある。正解は人それぞれで、ライフステージが変われば最適解もまた変わる。だからこそ、これからも機材構成について考え続け、そのたびに形を変えていくのだと思う。

この行き着いた機材構成も、きっと通過点に過ぎない。その変化さえ楽しめるようになったことこそ、今の自分にとって一番の収穫なのかもしれない。